4つの短編小説からなる本。表紙に惹かれた。それでけで買った本。
本多孝好という人をこの本で知った。あぁ良いな、と素直に思えた。
何が、と考えてみると、
「時間」に対する感情が描写されているということではないだろうか。
その人物の芯となるもの、
生きていること、
考える方法、
大切であるもの、大切にしたいもの、
そして目の前の鏡に映る自分。
そういうものが少しずつ見えるような気がする。
普段なかなか気づきにくくて、もやもやとしてしまうものなのだけれど、
あぁ、そうか、私もこんな風に思うのは、時間の経過に対してなのだな、と知ることができる。
生命っていうのは、時間の積み重ねなのだな、としみじみ思う。
時間に対する感情は、生命に対する感情にとても似ていると思う。
4つともどれも好きだ。でも特に、といわれれば「シェード」が好きだ。
『闇はそこにはないのですよ』
『光がなければ、闇もまた存在しません』
文字にしてしまえば、その通り。
それを、まるで絵画のように「描写」できるのが彼の素晴らしいところだと思う。
彼が書く人物は、いつも優しくて、強くて、弱い。
だから魅力的なのだと思う。